CDITニュース

令和元年10月15日

台風15号によって東京湾で発生した異常波浪の推算
〜横浜港に襲来した2方向波浪の特性解析〜
 
図ー1
図−1 台風第15号の経路等(出典:東京管区気象台)
9月9日未明から早朝にかけて、台風15号は伊豆大島付近から北上し、三浦半島を通過した後、東京湾を縦断し千葉市付近に上陸しました。(図−1)

図−2 横浜港の護岸被災状況(バラベット倒壊)
この台風は関東に上陸した台風としては、中心気圧が低く風が強いことが特徴で、進路の東側にあたる伊豆諸島や房総半島では記録的な暴風が吹き荒れ、家屋の倒壊や送電線等のインフラ被害など甚大な被害が発生しました。
この暴風によって東京湾内では異常波浪が発生し、横浜港では複数のふ頭で護岸が倒壊し、船舶の衝突によって臨港道路の破損、海釣り公園施設の破壊等が発生しました。 (図−2)
 当センターでは、この台風15号による高波の発生状況を気象庁の風データ(LFM)を入力値とし、最新の波浪推算モデルによって再現したところ、今回の異常波浪にはこれまでにない特徴があることがわかりましたので、ご報告致します。
図ー3
図−3 波浪推算値の観測値による検証(第二海堡)
【上図】赤のプロット:観測値、黒のプロット:推算値
【下図】黒実線:推算波高、青実線:推算周期、〇:観測波高
▼:観測周期 上段の矢印:観測波向、下段の矢印:推算波向
 図−3は今回の波浪推算値を東京湾口の第二海堡で検証したものです。第二海堡では最大で35m/s以上の強風が吹き、3m以上の高波浪が見られますが、波浪推算値もこれらを再現していることがわかります。
図−4は9月9日02時の東京湾全域の風や波浪の平面分布図(推算値)です。横浜港周辺に波高3m以上の高波浪の領域が見られます。また図−5は横浜港金沢ふ頭での波浪の方向スペクトル図について時間を追ってその変化を示したものです。周期5〜6秒の南東と東北東の2つの波向で波浪のエネルギーピークが見られることがわかります。これは台風が横浜港の近くを通過したことにより風向が急変し、横浜港には東北東方向(木更津方面)と南東方向(富津方面)の2つの方向から高い波が同時に襲来していることを示しており、この2方向からの高波浪の襲来が被災をもたらした一因であるとも考えられます。
図ー4
図−4  風・波浪の平面分布図(推算値) 9月9日2時00分

図ー5
図−5   横浜港(金沢ふ頭)における波浪の方向スペクトル(推算値)
9月9日 01時〜02時30分(30分毎)

 



 


Copyright(c)2019 Coastal Development Institute of Technology. All right Reserved.