ごあいさつ
評議員会長 釡 和明
一般財団法人沿岸技術研究センターは、本年9月27日に設立35周年を迎えます。昭和58年の設立以来、沿岸域や海洋の開発、利用、保全及び防災に関する数多くの調査、研究を行うとともに、技術の普及・啓発等に積極的に取り組んで参りました。
東京オリンピック・パラリンピックの開幕まであと1000日を切り、今年はイメージキャラクターの決定が予定されています。訪日外国人旅行者数の政府目標は、東京オリンピック・パラリンピックが開催される平成32年に4000万人とされており、平成29年の2869万人は前年比460万人増と大きく伸びています。また、クルーズ船で日本に入国した旅客数は、平成27年に約111.6万人と初めて100万人を突破し、平成29年は前年比27%増の約253万人となりました。今後とも日本の観光資源に磨きをかけることが重要であり、玄関口となる港湾・空港においても更なるサービス水準の向上が必要です。外国人旅行者の皆様には日本での滞在を大いに楽しんでいただきたいと思います。
一方、昨年も大きな災害が発生しました。7月には九州北部豪雨により多くの方々が被災されました。土石流災害では過去最大級の流木発生量であり、港湾においては流れ込んだ大量の流木の撤去活動が行われました。被災された皆様には心よりお見舞い申し上げますとともに、1日も早い復旧・復興を祈念申し上げます。
また再生可能エネルギーの導入に向けた取組が進められており、特に洋上風力発電は、陸上と比べ風車の大きさに関する制約が少なく、非常に大型の施設とすることが可能です。港湾はその適地として期待されておりますが、港湾での経済活動と両立させるためには、構造の安全性について、日本周辺に特有な台風や地震・津波に対する検討を進めることが必要です。そこで、当センターでは昨年7月に洋上風力研究室を立ち上げ、構造設計に関する調査研究に取り組んでいます。
日本経済は堅調に推移し、回復基調が続いています。海外に不安定な要因がありますが、より安定的な成長軌道に乗せるため、国土交通省においては、社会全体の生産性向上につながるストック効果の高い社会資本の整備・活用や新市場の開拓を加速する取り組みが進められています。
当センターにおいても「官・学・民」の技術力を結集し、沿岸域の保全及び防災に関する技術開発や技術支援に重点的、積極的に取り組み、全国の港湾、空港関係者のご要望に応じた質の高いサービスを提供し、ひいては、我が国の成長力の強化と国際社会の発展に貢献すべく努力を重ねて参りたいと考えています。国土交通省をはじめとする関係者の皆様には当センターへの変わらぬご支援とご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。
理事長 高橋 重雄
当センターは昭和58年に設立され、本年で35周年となります。これまで沿岸域及び海洋の開発、利用、保全及び防災に係る技術の開発、活用及び普及に努めて参りました。
この間、社会的要請の変化や多様化に対応して国際沿岸技術研究所、沿岸防災技術研究所、そして港湾の施設の技術上の基準への適合性審査を行う確認審査所を設置するなど、組織の充実を図って参りました。平成29年7月には再生可能エネルギー需要の高まりに対応するため洋上風力研究室を設置したところです。また、海洋・港湾構造物維持管理士制度や海洋・港湾構造物設計士制度を創設し、技術者の能力向上を進めて参りました。
現在、我が国の沿岸域、海洋においては、津波など自然災害に対する沿岸防災対策や公共インフラの維持管理が重要な課題となっています。
東日本大震災の発生以降、被災状況の把握と原因の究明及び防波堤への粘り強い構造の導入などの対応策の検討に取り組んで参りました。今後高い確率で発生が予測されている南海トラフ大地震、首都直下地震への対応など地震・津波の防災・減災技術についての調査研究や普及啓発の取り組みを進めて参ります。
港湾施設の維持管理については、技術支援業務を行うとともに、国土交通省の登録技術者資格となっている海洋・港湾構造物維持管理士について、講習会の内容の充実等を図り、より一層普及して参ります。
また現在、全国に気象海象の実況と予測情報を提供しているところですが、より精度が高いWaveWatchⅢを導入した新たな予測システムにより、提供情報の充実を図る他、新たに開発された技術に関する各種マニュアルの整備や講習会等を通じた普及啓発、外国の研究機関との国際的な技術交流等にも積極的に取り組んで参ります。
これまでに培った知見や経験、高度な専門性を活かし、産・学・官との連携を通じ、技術の開発、活用及び普及に努めて参りますので、皆様には当センターへの一層のご理解とご協力を賜りますようお願いを申し上げます。