「数値波動水路プログラム(CADMAS‐SURF)」の公開のご案内
当センターでは、平成10年から「数値波動水路の耐波設計への適用に関する研究会」を設置し、水理模型実験の代わりとなる実用的な数値波動水路の開発を行ってまいりました。
開発した数値波動水路CADMAS-SURFは、流体の基礎方程式であるナビエ・ストークス方程式を数値的に解くものであり、VOF法と呼ばれる自由表面の処理法に基づく計算手法です。波、流れ、地盤の相互作用を伴う複雑な現象の数値シミュレーションを迅速かつ容易に行うことができます。 21世紀の海洋構造物の設計において主流となる性能設計を支援する数値計算ツールとして実務での利用が期待されています。
研究会では、数値波動水路CADMAS-SURFの改良、拡張を行ってきましたが、今般、当センターを通じまして、広く一般の方々に公開する運びとなりました。より多くの実務の方々に使用していただき、耐波設計への数値計算の適用をより促進したいと考えています。
プログラムの公開によって、多くの研究者の方がこのプログラムを利用し、さらなる発展に貢献されることを期待しています。
CADMAS‐SURFのお問い合わせ及びご購入は下記の宛て先まで
一般財団法人 沿岸技術研究センター
〒105-0003 東京都港区西新橋1丁目14番2号 新橋エス・ワイビル5階
CADMAS‐SURF担当者
海域施設の耐波設計に適用できる数値波動水路
数値波動水路は、従来の断面2次元造波水路の模型実験に代わり得る手法であり、海域施設の耐波設計への適用を目的に開発され、自由表面や砕波の影響を十分考慮できるものです。
数値波動水路では、水位や流速、加速度や圧力が計算で求められます。波の遡上、リーフによる波の変形、砕波を伴う一様斜面上での波の伝播、ケーソン等の構造物への波力と越波量、反射率など様々な波動現象への適用が試みられています。
- ~数値波動水路の耐波設計への適用に関する研究報告書~沿岸開発技術ライブラリーNo.12参照
- ~数値波動水槽の耐波設計への適用に関する研究会中間報告書~沿岸技術ライブラリーNo.30参照
砕波波形の再現
数値計算の対象となる実験例
数値計算の例(越波)
概 要
数値波動水路の機能について
自由表面など移動境界を有する流れ場に対する数値計算法として,高さ関数による方法,マーカー粒子を追跡するMAC(Harlowら,1965)法,Lagrange座標系によるALE法(Hirtら,1972)および境界適合座標法等がよく知られている.また近年,密度関数法(Miyataら,1988),Level Set法(Sussmanら,1994),C-CUP法(Yabe & Wang,1991)並びに粒子法(越塚,1997)などの新しい手法も開発され,我が国の海岸工学の分野でも,多くの成果(藤間ら1984,川崎・岩田1996,榊山ら1997,谷本ら1998,細山田ら1998,渡辺ら1996,陸田ら1998)が挙げられている.これらの手法の中でも,Hirtら(1981)によるVOF(Volume of Fluid)法は,実用的でしかも複雑な自由表面を取扱ことができる優れた手法といえる.
数値波動水路の数値計算法には,VOF法とSMAC(Simplified Marker and Cell)法を採用し,連立1次方程式の解法に前処理付きBCGSTAB法を用いることで高速・安定な計算を可能としている.また,設計者が気軽に数値実験を行えるようにするため,数値波動水路のプラットフォームには飛躍的な性能向上をつづけるパーソナルコンピュータを選択した.
特 徴
- 自由表面が多価関数となる複雑な流れを解析対象とする
- 2次元非圧縮流体のNavier-Stokes(Reynolds)方程式と連続の式を基礎方程式とする
- 自由表面解析モデルにVOF法を採用する
- ポーラスモデルを用いて形状近似精度を高める
- セル単位で任意の位置に構造物や境界条件を設定可能とする
- 造波モデルとして,造波境界および造波ソースの2つを採用する
- 造波関数(造波用の流速と水位の計算方法)として,ストークス波等の6種類を採用する
- 無反射モデルとして,Sommerfeldの放射境界とエネルギー減衰帯の2つを採用する
- 気泡および水滴の処理として,TimerDoor法を採用する
システム構成の概要
機能一覧
物
理
モ
デ
ル解析対象
・自由表面が多価関数となる複雑な流れ
基礎方程式
・2次元非圧縮性粘性流体のNavier-Stokes方程式と連続の式をポーラスモデルに基づいて拡張した式
座標系
・デカルト座標
自由表面解析モデル
・Volume of Fluid法(VOF法)
乱流モデル
・高Re型k-e2方程式モデル
造波モデル
・造波境界
・造波ソース
(それぞれの造波モデルに以下の造波関数を適用可能)
造波関数
・ストークス波第5次近似解(定形進行波)
・クノイド波第3次近似解(定形進行波)
・流れ関数法Bによる数値解(定形進行波)
・ピストンタイプ(造波板をモデル化)
・フラップタイプ(造波板をモデル化)
・マトリクスデータ(任意波形)
無反射モデル
・Sommerfeldの放射境界
・エネルギー減衰帯
スカラー量の移流拡散
・多成分のスカラー量の移流拡散計算が可能
(ただし,ユーザルーチンの変更等,ソースプログラムが必須)
一般の境界条件
(造波境界と放射境界以外)・セル単位で任意の位置に構造物を設定可能
・構造物表面の任意の位置に境界条件を設定可能
・境界条件の種別は入力データで選択可能(スリップ、ノンスリップ、流速指定、対数則、フリー、完全粗面)
数
値
解
法
と
ア
ル
ゴ
リ
ズ
ム離散化
・スタッガード・メッシュを用いた差分法
・ポーラスモデルを用いた形状近似
時間積分
・Euler法
・Simplified Marker and Cell法(SMAC法)
移流項(対流項)
・VOF関数F以外の移流項(対流項)は以下のいずれかを選択可能
(1)1次精度風上差分
(2)2次精度中心差分
(3)DONORスキーム((1)と(2)のハイブリッド形式)
(4)QUICKスキーム
・VOF関数Fの移流項はドナー・アクセプタ法で離散化
表面セルの流速の設定方法
・外挿(流体側の2点の流速から外挿する)
・勾配ゼロ(流体側の流速と同じにする)
表面の方向の決定方法
・NASA-VOF3Dの方法を採用
気泡と水滴の処理
・TimerDoor法
連立1次方程式の解法
・MILU-BCGSTAB法
時間刻み幅の制御
・入力値固定
・自動時間刻み幅
描
画
機
能指定した時刻の場のデータ
(描画部を利用)・流速ベクトル
・各種物理量の等値線
・等値線による自由表面
・流体の存在領域の塗り潰し
時系列データ
(表計算ソフトを利用)・指定個所の初期水面からの水位変動
・指定個所の計算値,他
境界条件一覧
この公開では、「数値波動水路の耐波設計への適用に関する研究会」で開発されたプログラムをなるべく広く多数の方へ提供したいと考えております。このため、プログラムは、本ホームページより無償でダウンロードできるようにさせて戴きましたが、逆にユーザーの方からプログラム機能に対する要望やプログラムを使用された事例などの多くの情報を返していただき、プログラムの活用、改良の参考とさせていただきたいと思います。
本研究会の趣旨をご理解の上、使用許諾契約への同意、ユーザー登録にご協力ください。
1.本ページよりダウンロードしてご使用ください。
- プログラムは無償です。以下のお願い事項および、「使用許諾契約書」を必ずお読み頂き、同意の上、本ページよりソースプログラムをダウンロードしてご使用ください。
2.必ずユーザー登録をしてください。
- ユーザの方々のご利用状況の把握、及び、今後は情報提供も積極的に行って行きたいと考えております。ダウンロードの際に、氏名、所属および利用目的などの必要事項をご登録ください。
3.ユーザ登録の内容が変更になった時には、必ず再登録、更新手続きを行ってください。
- 本ページの更新画面にて、最新の情報にて再登録をお願いします。
4.ご利用期限は3月31日となります。必ず更新手続きをお願いします。
- 毎年3月に事務局よりユーザー登録内容の確認メールをお送り致します。
- 内容をご確認の上、最新の情報で再度、ご登録お願いします。
- また、その際に、ご利用状況も併せてお願い致します。
5.ご使用の際には、「ご利用状況」をご報告ください。
- ご使用内容、不具合やバグの発見、ご使用状況、結果、感想など、できるだけ詳しくご報告ください。
6.改良プログラムソースは、必ずお送りください。
- プログラムバグの発見などで、ソースプログラムを改良された場合、改良点、内容をご報告頂くと同時に、改良後のソースプログラムをお送りください。
7.使用方法やトラブルに対する問い合わせ対応は致しかねます。
- 使用方法につきましては、
- ~数値波動水路の耐波設計への適用に関する研究報告~沿岸技術ライブラリーNo.12を参照してください。
8.本プログラムを用いて得られた計算結果のすべてについて使用者が責任を持ってください。