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マイティーホエール上に設置
された太陽光発電装置
マイティーホエールの波力発電と
太陽光発電の複合システム

海洋科学技術センターが平成十年九月より、三重県の五ケ所湾沖で実験している浮体式の波力発電装置がマイティーホエールです。昨年十月からは、浮体上に波エネルギーと太陽光との複合型自然エネルギーシステムを構築し、効率的な自然エネルギーの利用・応用技術の確立を目指しています。
互いの欠点を補う組み合わせ
 マイティーホエールは、酒田港の波力発電防波堤と同様、振動水柱式空気タービン方式の波力発電装置です。その規模は、幅三〇m、長さ五〇mで、定格三〇kW二基、波の大小で一〇kWと五〇kWに切り変わる発電装置一基と、計三基の波力発電装置が搭載されています。ただ、マイティーホエールの場合は浮体式で、船をつなぐように錨と鎖で係留されているところが、固定式の防波堤とは異なる点です。
 マイティーホエールは陸上の配電系統とまったく接続されていない独立した発電所を形成していますが、例えば波がない穏やかな時期が続くと、計測器やエアコンディショナーといった電力負荷に対しては、補助用に搭載している二〇kWのディーゼル発電機が自動的に作動して、足りない電力を補っていました。しかし、自然エネルギーを利用することを徹底させるなら、やはり補助となる設備も自然エネルギーのものにしたいと、太陽光発電装置の導入になりました。海洋科学技術センター海洋技術研究部の鷲尾幸久研究副主幹に聞きました。

マイティーホエール全景
(写真提供/ 海洋科学技術センター)
 「波力も太陽光も自然エネルギーですから、なかなかコンスタントに得られないことがひとつの欠点です。欠点を回避する手段の一つは、それぞれの欠点を補うような形でのエネルギーの複合化ではないかと考えたのです。
 つまり、普通に考えると、波が高いときは比較的悪天候で、波が静かなときは、逆に天気が良くて日も照っている。そのため、お互いに苦手な部分を補い合えることになるわけです。
 ところでマイティーホエールによるプロジェクト研究に入る前の机上研究の段階で、複合発電システムの可能性についても取り組みました。太陽光発電では物陰になると効率が落ちるため、どう置くのが効率的か、どのくらいの規模のものを搭載するか等を検討しました。その結果、マイティーホエール上に二〇kWの太陽電池を置けると結論しましたが、コストの問題などもあり、現在一〇kW分の装置が搭載されています」
 また、マイティーホエールにはバッテリーが搭載され、負荷に供給して余った分は蓄電されます。波の静かな日には、バッテリーから負荷に電力を供給。バッテリーで送り出せない低さにまで蓄電レベルが落ちるとディーゼル発電機が作動しましたが、今は太陽光発電装置が、波力発電装置が働かないときには、ある程度の電力をバッテリーへ供給します。
 「バッテリーが満充電状態になると、それ以上の発電は無駄になる。ですから、発電設備に対して最適なバッテリー容量で、しかも複合装置の場合は波力発電装置から充電するバッテリーと太陽光発電装置から充電するバッテリーのそれぞれを備えたほうがいいのか、それともある一定の容量のバッテリー一つにそれぞれから充電すればいいのか、バッテリーのコストは非常に高いので、最適システムの構築は今後出てくるデータを見ながら検討していく必要もあると思います」

太陽光発電との複合化の応用
 一つの大きな島として様々に活用が期待されるメガフロート。その研究の一環として、昨年、将来的に超大型のメガフロートを沖合に展開する場合の波による影響への対処として、周囲に振動水柱式空気タービン方式の波力発電装置を設備して、波の揺れを軽減しようという研究も行われました。 「メガフロートは海面に紙が一枚浮いているような弾性浮体で、波が来るとぐにゃぐにゃとした運動をする。最近終えた横須賀沖のメガフロートは、防波堤の内側で実験されました。防波堤なしに、超

海洋科学技術センター
 鷲尾 幸久氏
大型浮体構造物を沖合に展開しようとするとき、波による揺れを何らかの形で防がなければなりません。
 そのとき、周りに波力発電装置の空気室をつけておくと、波のエネルギーが吸収されて波による動揺も減ります。完全にゼロにはなりませんが、一〇〇動くところが五〇に落ち、さらに電力も得られる。しかも非常に大きい浮体ですから 、スペースがたっぷりあります。そこに太陽光発電装置や風力発電装置、さらに廃棄物などを焼却しての発電装置なども取り入れて試算し、何とかメガフロート全体の必要電力をまかなえるのではないかという研究報告が出せそうです。その組み合わせで大きい割合を占めるのは太陽光発電です」
 将来、自然エネルギーを効率良く使っていくためには、複合化が必須といえるのかもしれません。


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