目次 前ページ 次ページ
CDITとは 最新号 バックナンバー

海外フォーラム
21世紀の海域施設の新しい耐波設計法に関する国際ワークショップ
(International Workshop on Advanced Design of Maritime Structures in the 21st Century)


はじめに

ワークショップでの活発な議論の様子
「21世紀の海域施設の新しい耐波設計法に関する国際ワークショップ」が、平成十三年三月五日から六日に横須賀市で開催された。この国際ワークショップは、この分野の不定期な国際ワークショップの一つで、国土交通省港湾技術研究所(小和田亮所長)が主催し、(財)沿岸開発技術研究センター・(社)土木学会の後援で行われた。会議は、将来の海域施設の設計法のありかたを議論しようとするものであり、ワークショップ実行委員会(合田良実委員長)によって組織されたものである。十九編の口頭発表、二十編のポスター発表があり、各発表後の討議だけではなく、最後のパネル討議でも積極的な議論があった。特に、外国からはこの分野の指導的な研究者が参加し、非常に活発な発表および討論となった。

信頼性設計と性能設計

レセプションで挨拶する井上興治
(財)沿岸開発技術研究センター理事長
 二十世紀において海域施設の設計技術は大きく進歩し、現在では、巨大な波に耐えることができる大水深防波堤など近代的な構造物を設計できるようになっている。しかし、現在の設計法が二十一世紀においても引き続き十分なものであるのかどうかについては疑問がある。
 二十一世紀の土木技術者には、構造物の破壊確率、変形の程度、破壊の影響、そして必要な維持管理などを設計時に明らかにすることが求められるようになると考えられる。すなわち、建設される構造物の性能をより詳細に、また正確に示すことが重要になっている。たとえば、設計条件を上回る高波や高潮が来襲する危険性は常にあり、そうした場合に何が起きるのかを把握した上で、その対策を含めて設計を行う必要があり、広範囲な性能照査に基づく設計が重要となる。
表−1 ケーソンの性能マトリックス

縦軸は四種類の再現期間の波のレベルで、横軸は四種類の極限状態の性能設計のレベルである。表中の記号AからCは防波堤の重要度を示している。
 ワークショップでは、合田教授やブルカース教授(デンマーク)のキーノートアドレス、あるいはバンデルメーヤ博士など多くの発表が、二十一世紀に向けて海域施設の耐波設計技術として確率や変形を考慮した設計の必要性を述べており、それを信頼性設計、あるいは性能設計と呼んでいる。ただし、単に設計者のための設計というより、国民に説明できる設計として、より広義な用語として性能設計と使うことを港研の高橋特別研究官ら日本側が提案している。表―1に、高橋重雄らが提案するケーソンの性能マトリックスを示す。

大型施設による実験
 将来の設計では、設計条件を上回っても構造物がどのような破壊にとどまるかを予測することが重要である。大規模な実験施設では、こうした破壊を含む実験が可能となり、将来の設計に大いに役立てることができる。また、二十世紀には解決できなかった、基本的な問題の解明にも貢献すると考えられる。ワークショップでは、ドイツのハノーバーの三〇〇m造破水路や、日本の大規模波動地盤水路の紹介があった。
 数値計算  将来の設計にはコンピューターが不可欠であり、波と構造物の相互作用も、流体運動を直接数値計算によって解くことによって把握することができる。VOF法による波の数値計算結果を設計に用いることについて、磯部教授ほかからいくつかの紹介があった。

新しい構造
 二十世紀後半には、多くの新しい構造が提案されている。二十一世紀にもさらにこの分野の発達が期待されており、いくつかの興味ある新構造が紹介されている。また、アイスランドのシガーダソン博士からは日本では知られていないバーム防波堤の紹介があった。

おわりに
 二十一世紀の設計法として、信頼性設計あるいは性能設計という概念での設計法が提案されているが、今後この方向で技術開発が急速に進むものと期待される。また、大型施設による破壊も含めた現象の把握や、数値計算のめざましい進歩に根ざしたさらに合理的な設計法へのアプローチの重要性が、今回日本から発信されたことの意義は極めて大きいものがある。


■参考:海外からの主要な参加者 Prof. H.F. Burcharth (デンマーク)、Prof. H.Oumeraci(ドイツ)、Dr. S. Sigurdarson(アイスランド)、Prof. L. Franco(イタリア)、Prof. A. Lamberti(イタリア)、Prof. Ryu, Cheong-Ro(韓国)、Prof.Yu, Xiping(中国)、Prof. M.A. Losada(スペイン)、Dr. J. Van der Meer(オランダ)、Dr. M. B. de Groot(オランダ)、Prof. N. Kobayashi(米国)、Dr. J.A.Melby(米国)
■文/(財)沿岸開発技術研究センター
    理事・リサイクル研究部長 鶴谷広一

目次 前ページ 次ページ
CDITとは 最新号 バックナンバー

Copyright(c)2001 Coastal Development Institute of Technology. All right Reserved.