はじめに
信頼性設計と性能設計
二十一世紀の土木技術者には、構造物の破壊確率、変形の程度、破壊の影響、そして必要な維持管理などを設計時に明らかにすることが求められるようになると考えられる。すなわち、建設される構造物の性能をより詳細に、また正確に示すことが重要になっている。たとえば、設計条件を上回る高波や高潮が来襲する危険性は常にあり、そうした場合に何が起きるのかを把握した上で、その対策を含めて設計を行う必要があり、広範囲な性能照査に基づく設計が重要となる。
大型施設による実験 将来の設計では、設計条件を上回っても構造物がどのような破壊にとどまるかを予測することが重要である。大規模な実験施設では、こうした破壊を含む実験が可能となり、将来の設計に大いに役立てることができる。また、二十世紀には解決できなかった、基本的な問題の解明にも貢献すると考えられる。ワークショップでは、ドイツのハノーバーの三〇〇m造破水路や、日本の大規模波動地盤水路の紹介があった。 数値計算 将来の設計にはコンピューターが不可欠であり、波と構造物の相互作用も、流体運動を直接数値計算によって解くことによって把握することができる。VOF法による波の数値計算結果を設計に用いることについて、磯部教授ほかからいくつかの紹介があった。 新しい構造 二十世紀後半には、多くの新しい構造が提案されている。二十一世紀にもさらにこの分野の発達が期待されており、いくつかの興味ある新構造が紹介されている。また、アイスランドのシガーダソン博士からは日本では知られていないバーム防波堤の紹介があった。 おわりに 二十一世紀の設計法として、信頼性設計あるいは性能設計という概念での設計法が提案されているが、今後この方向で技術開発が急速に進むものと期待される。また、大型施設による破壊も含めた現象の把握や、数値計算のめざましい進歩に根ざしたさらに合理的な設計法へのアプローチの重要性が、今回日本から発信されたことの意義は極めて大きいものがある。 ■参考:海外からの主要な参加者 Prof. H.F. Burcharth (デンマーク)、Prof. H.Oumeraci(ドイツ)、Dr. S. Sigurdarson(アイスランド)、Prof. L. Franco(イタリア)、Prof. A. Lamberti(イタリア)、Prof. Ryu, Cheong-Ro(韓国)、Prof.Yu, Xiping(中国)、Prof. M.A. Losada(スペイン)、Dr. J. Van der Meer(オランダ)、Dr. M. B. de Groot(オランダ)、Prof. N. Kobayashi(米国)、Dr. J.A.Melby(米国) ■文/(財)沿岸開発技術研究センター 理事・リサイクル研究部長 鶴谷広一
|