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沿岸プロジェクト―21世紀を創る
「那覇港沈埋トンネル」
沖縄の空と海の玄関を結ぶ


海洋土木技術の粋を結集する 沖縄県初の海底トンネル
 沖縄県の海の玄関口・那覇港は四つのふ頭を持ち、さまざまな表情があります。県内で消費あるいは生産される物資のほとんどが経由される運輸ターミナルとして、平成九年には待望著しい国際海上コンテナターミナルもオープンするなど国際貿易港として、また、都市型海洋リゾート施設の整備計画もあり、新世紀においてさらなる発展への大きな期待が寄せられています。
  一方、一九九九年四月には、那覇空港の新ターミナルが供用開始され、新しい沖縄の空の玄関口として機能しています。
 この二つの玄関口が隣接する那覇港地区には、今後さらに取り扱い貨物量及び人々の流入量の増大が予想され、港湾・空港関連交通における輸送体系の整備が不可欠となっています。そこで、那覇港と那覇空港を結ぶことで背後圏との円滑な輸送体系を強化し、既存幹線道路の慢性的な交通渋滞の解消を図るために計画されたのが、那覇港沈埋トンネルであり、県内初の海底トンネルとなります。  本トンネルは昭和六十三年二月に行われた那覇港港湾計画における臨港交通施設の一環として計画された臨港道路で、那覇ふ頭港口部を横断して、三重城側地区と那覇空港方面を結ぶため、現在、沈埋トンネル工法により海底トンネル部の建設が進められています。トンネル区間の延長は一一四三m、このうち沈埋トンネル部の延長は七二四mで、この区間に全八函の沈埋函が設置されます。工事の主体は沖縄総合事務局那覇港湾空港工事事務所があたり、設計や施工計画、技術的課題の抽出などについて(財)沿岸開発技術研究センターがバックアップをしています。
 那覇港沈埋トンネルの核となる構造物が沈埋函で、函体は幅三六・九四m、高さ八・七m、長さは九〇mと九二mの二種類がある鋼殻とコンクリートのハイブリッド構造になっています。八つの沈埋函を製作し、所定の位置に沈めてつなぎ、整備すればできあがるわけですが、巨大な構造物を海上で扱うなど、解決すべき課題を常に突き付けられ、建設土木技術の粋を集めた一大事業なのです。ここで完成までの工程を見てみましょう。
・仮設工
  沈埋函を浮遊打設するための係留施設の整備、沈埋函沈設時に那覇水路の代替航路を確保するための浚渫作業など、一連の工程を円滑に処理するための準備工程。二○○○年度に終了。
・沈埋函製作(県外)
  沖縄県内で沈埋函を製作する大規模ドックが確保できないため、他県工場内で本体鋼殻部の製作が行われます。
・回航
  製作地より鋼殻をタグボートで那覇港まで回航。
・沈埋函製作(沖縄)
  係留桟橋に鋼殻を仮置きし、高流動コンクリートの打設及び艤装品の取り付け作業。
・海上工事
  沈埋函据え付け位置の浚渫と、沈埋函の沈設から埋め戻しまでの一連の作業。
・函内工事(トンネル設備工)
  沈埋函内部を貫通させ、道路としての設備を確保するための設備工事。
・立坑(三重城・空港側立坑部)
  道路としての機能を確保するための下部と、換気機能を有する上部に分けられ、地下三階地上四階の建物となる。
・掘割部
  沈埋函と立坑を接合し、土留を施し掘削を行う。
 二〇〇一年十月には、三重城側に設置される一号函がいよいよ沈設される予定です。 また、陸上部に現れる唯一の建物である換気塔は、景観に配慮した沖縄の海の玄関口にふさわしい外観デザインになっています。環境への配慮として換気方式は排気ガスに含まれる二酸化窒素及び一酸化炭素の濃度を環境影響評価指数以下の希釈し、地上三十二mの高さに排出します。

自然エネルギー導入を通して 地球環境保護の姿勢を貫く

那覇沈埋トンネル調査研究事業

 (財)沿岸開発技術センターが委託された那覇港沈埋トンネルプロジェクトの調査研究業務の中では、本トンネルの電気設備への電力供給における新エネルギー(風力等)の活用の可能性並びに沈埋トンネルの維持管理費低減の可能性についての検討があります。
 この背景としては、港湾・沿岸域の場は本誌「特集」で見てきたように、今後、新エネルギーの開発・利用の場として提供するとともに、港湾関連施設などの運営に必要な電力に新エネルギーを活用していく必要があるためです。
 那覇港沈埋トンネルに必要な電気設備としては、換気設備、非常用設備、照明、排水設備、受配電設備、立坑建築設備などがあり、これらの設備に供給するための新エネルギーとして(1)風力発電、(2)太陽光発電、(3)蓄電池、(4)自然光の採光等の候補が挙がり、それぞれについて実現性を検討しています。
 二酸化炭素温室効果ガス削減を進めるために、那覇港沈埋トンネルにおいても積極的に新エネルギーの利用促進に取り組んで行く必要があります。今後は、設置場所の選定方法、建設費の低減化方策と経済性の精査、関係行政機関等との協議・調整等の課題に取り組んでいくこととしています。
 那覇沈埋トンネルでは、これら以外にも、地震災害時にもトンネルが変形しにくい構造や工期短縮及びコスト縮減のために国内初の新しい工法を積極的に導入して事業が進められています。
 沖縄の海と空を結ぶ沖縄県初の海底トンネルは、このような面からも今後、二十一世紀に計画される他のトンネル技術に寄与するものと期待されています。


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